問題解決のプロセスにおいて、根本原因を特定することは非常に重要です。そのために開発されたのが「なぜなぜ分析」という手法であり、これは問題が発生した際にその背後にある深い理由を探るために用いられます。
しかし、一部の人々がなぜなぜ分析を煩わしいと感じている可能性があるようです。その原因を探っていきます。
なぜなぜ分析とは?
なぜなぜ分析は、もともとトヨタ自動車の製造現場で生まれ、品質管理やプロセス改善に役立てられてきました。一般的には「5Whys」として知られており、問題の表面的な原因ではなく、その根底にある本質的な原因を明らかにすることを目的としています。
この分析法は、問題が起こった時に「なぜ?」という質問を最低5回繰り返し、それに対する答えを深堀りすることで、表面的な原因を超えた根本的な原因を見つけ出すことができます。このプロセスを通じて、単なる一時的な修正ではなく、問題が再発しないような持続可能な解決策を導き出すことが可能になります。
なぜなぜ分析の具体的な例
なぜなぜ分析の具体的な例を以下に示します。
問題: 自動車工場でロボットアームが予期せず停止する。
1. なぜロボットアームが停止したのか?
回答: 電力供給が途絶えたため。
2. なぜ電力供給が途絶えたのか?
回答: サーキットブレーカーが作動したため。
3. なぜサーキットブレーカーが作動したのか?
回答: 電力システムに過負荷がかかったため。
4. なぜ電力システムに過負荷がかかったのか?
回答: 新しい設備が追加され、電力容量を超えたため。
5. なぜ新しい設備が追加されたのか?
回答: 設備の拡張が計画されていたが、電力容量の再評価が行われていなかったため。
この分析を通じて、根本原因は「設備の拡張時に電力容量の再評価が行われていなかった」ことにあると特定できます。したがって、解決策としては、設備の拡張計画には必ず電力容量の評価を含めること、または電力容量を増やすことが考えられます。
このようにして、なぜなぜ分析は、製造業だけでなく、IT業界を含む多くの分野で問題解決のために活用されています。この手法は、問題の根本原因を明らかにし、効果的な解決策を導き出すための強力なツールとなっています。
なぜなぜ分析がうざいのはなぜ?
しかし、なぜなぜ分析は問題の根本原因を探る効果的な手法ですが、場合によっては時間がかかったり、過度に詳細になりすぎたりすることで、実施する人々にとって面倒やストレスと感じられることがあるようです。 特に、以下のような理由で「うざい」と感じることがあります。
1. 活用場所の間違い:なぜなぜ分析は元々製造現場での問題解決のために開発された手法であり、サービス業など他の分野で適用する際には、その効果が限定的であるか、適切でない場合があります。
2. 人間の構造によるワナ:人間の安全安心欲求や生存本能が邪魔をすることがあり、仕組みに原因があるとされると、間接的に関わっている人に原因があると捉えられがちです。
3. 原因と結果の構造の認識間違い:問題には複数の要因が絡み合っていることが多く、単一の真因を特定することは困難であるにも関わらず、なぜなぜ分析では一つの原因を追求する傾向があります。
これらの点から、なぜなぜ分析が必ずしも全ての状況において最適な手法ではないと考える人もいるようです。また、分析が形式的になりがちで、真の原因を見つけることから逸脱してしまうことも、「うざい」と感じる一因となっているかもしれません。
なぜなぜ分析の欠点
なぜなぜ分析の欠点と言えるものを整理します。
1. 表層的な原因しか見つけられない : なぜなぜ分析は問題の表面的な原因しか見つけられない可能性があります。根本的な原因まで掘り下げられないと、根本的な解決策は見つかりません。
2. 根本原因が見えにくい : なぜなぜ分析を繰り返しても、最終的な根本原因が見えにくくなり、問題の本質的な原因を見逃してしまう恐れがあります。
3. 解決策が見いだせない : 根本原因が特定できないと、適切な解決策を見つけるのが難しく問題の再発を防ぐための有効な対策が立てられません。
4. 個人への責任追及につながる : なぜなぜ分析では、個人の能力や責任に目が向きがちで、これがパワハラや不当な批判につながる恐れがあります。
5. 「吊るし上げ」につながる : なぜなぜ分析で特定の個人を責めたり非難したりすることがあり、これは「吊るし上げ」と呼ばれ、問題解決にはなりません。
つまり、なぜなぜ分析は問題の根本原因を見つけるのが難しく、個人への責任追及につながりやすいという欠点があります。適切に活用しないと、問題解決にはならず、かえって組織に悪影響を及ぼす可能性があります。それゆえ、なぜなぜ分析は意味がないと結論づけてしまう人もいるようです。
なぜなぜ分析の欠点を補う方法
効果的な問題解決のためには、手法を適切に選択し、適用することが重要です。
なぜなぜ分析の欠点を補うために、マインドマップを活用する方法があります。
マインドマップを使うことで、
・問題の全体像を俯瞰的に把握できる。
・問題の要因を視覚的に整理・分析できるため、根本原因の特定が容易。
・個人への責任追及ではなく、システムや仕組みの問題点に着目できる。
このように、マインドマップを活用したなぜなぜ分析は、問題の本質的な原因を特定し、適切な解決策を見出すのに有効です。
ですので、なぜなぜ分析を行う際は、個人への責任追及を避け、システムや仕組みの問題点に着目することが重要です。マインドマップの活用など、分析手法の工夫も検討すると良いでしょう。
他の問題解決方法
問題解決のためには、なぜなぜ分析以外にも様々な手法が存在します。以下にいくつかの代表的な方法を紹介します。
1. PDCAサイクル:
・Plan(計画): 問題を特定し、目標を設定します。
・Do(実行): 計画に基づいて行動を起こします。
・Check(評価): 行動の結果を評価し、目標達成度を測定します。
・Act(改善): 問題点を改善し、次のサイクルに反映させます。
2. フィッシュボーン図(原因と結果の図):
問題の原因を「人」「方法」「機械」「材料」「測定」「環境」の6つのカテゴリに分け て考え、それぞれの原因を図式化します。
3. ブレインストーミング:
複数の人が集まり、自由にアイデアを出し合い、問題解決のためのアイデアを集めます。
4. シックスシグマ:
データ駆動型のアプローチで、プロセスの変動を減らし品質を向上させるための手法です。
5. TRIZ(発明問題解決理論):
既存の発明から一般的な原則を抽出し、新たな問題解決のために応用する手法です。
6. A3レポート:
A3サイズの紙に問題の概要、現状分析、対策、実行計画などをまとめ、問題解決のプロセスを視覚化します。
これらの手法は、それぞれ異なるアプローチを取りますが、共通しているのは問題を明確にし、根本原因を探り、効果的な解決策を見つけ出すことを目的としている点です。状況や問題の性質に応じて最適な手法を選択することが重要です。どの手法も、チームで協力して取り組むことで、より効果的な解決策を導き出すことができます。
なぜなぜ分析との比較
なぜなぜ分析と以上に挙げた他の問題解決手法を比較した場合、どれが最も効果的かは、対象となる問題の性質や状況によって異なります。以下に、いくつかの一般的なガイドラインを示します。
なぜなぜ分析 は、比較的単純で直接的な問題に対して効果的です。この手法は、問題の根本原因を迅速に特定するのに役立ちますが、複雑な問題や多くの変数が絡む場合には限界があります。
PDCAサイクル は、継続的な改善が必要なプロセスやシステムに適しています。計画、実行、評価、改善のステップを繰り返すことで、長期的な品質向上を目指します。
フィッシュボーン図 は、問題の原因が多岐にわたる場合や、チームでのブレインストーミングが必要な場合に有効です。原因と結果の関係を視覚的に表現することで、問題の構造を理解しやすくします。
シックスシグマ は、データに基づいて問題を解決することを重視するため、データ収集と分析が可能な環境での使用に適しています。
TRIZ は、創造的な問題解決が求められる場合や、革新的なアイデアが必要な場合に役立ちます。既存の解決策から学び、新しい問題に応用することができます。
A3レポート は、問題解決のプロセスを文書化し、コミュニケーションを促進するために有効です。特に、チーム内での共有や上層部への報告に役立ちます。
まとめ
最終的には、問題の種類、組織の文化、利用可能なリソース、関係者のスキルセットなど、多くの要因を考慮して最適な手法を選択することが重要です。また、複数の手法を組み合わせて使用することで、より包括的な問題解決が可能になる場合もあります。効果的な問題解決には、適切な手法の選択だけでなく、チームの協力とコミュニケーションも不可欠です。
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